矯正治療では、健康的な咬み合わせ、審美的な歯並びと顔貌(口唇の位置など)を目標に治療計画が立てられます。
その目標のためには、時として抜歯が必要となります。治療開始前に矯正歯科医と患者さんがよく話し合って合意することが大切です。
成人の場合は、自分が理想と感じる歯並びや口元のイメージを何となく持っているものなので、矯正歯科医とのゴールの擦り合わせがしやすいものです。
しかし、子供の矯正治療では、患者である子供自身にはゴールがイメージできないため、親との話し合いになります。
ここで注意が必要なのは、子供の矯正治療では「歯を抜かないで並べること」が目標になってしまいがちなことです。
親は子供に対する愛情から、「健康な歯を抜かせたくない」という意識を持っています。自分の歯より、子供の歯の抜歯に強い抵抗があるのです。
歯科医師は、患者さんの主訴に重きを置くので、保護者に抜歯をさせたくないという強い希望があれば治療計画が非抜歯に流されがちです。しかし無理をした非抜歯矯正では、口元の突出を招く場合があります。また、歯並びの安定性も低くなります。「どうしても歯を抜かせたくないんです」と訴えた結果として、健康にとって最良の結果にならない場合も多いのです。
当たり前のことですが、子供だっていつかは成人します。つまり、子供だろうと大人だろうと治療目標は同じ筈なのです。
ところが、子供のころに言われるがままに矯正治療を受け、口元が突出した仕上がりになってしまっているため、やはり抜歯をして矯正治療をやり直したいと来院される成人は少なくありません。目標を歯を抜かないことだと見誤った典型例です。
私達はやみくもに抜歯を推奨することはなく、非抜歯で治療する方法も考えた上で、抜歯の方がメリットが明らかに大きいと判断した時に抜歯を推奨します。
矯正治療の目標は、健康的な咬み合わせ、審美的な歯並びと顔貌。ここがブレてはいけません。
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