さ行

歯科矯正用アンカースクリュー

歯を動かすための固定源として歯槽骨に埋入する直径1.4〜2.0mmの細いネジ。以前は矯正用インプラント、マイクロスクリュー、ミニスクリューなどと様々な名称で呼ばれていたが、2012年に日本矯正歯科学会がガイドラインを作成し、歯科矯正用アンカースクリューに統一された。専用のドライバーを用いて、少量の局所麻酔下で埋入する。使用後は容易に撤去が可能である。歯科矯正用アンカースクリューを用いることにより、従来では不可能であった治療計画が実現できるようになった。

歯槽基底弓長径

矯正歯科での診断に用いる模型分析の計測項目の一つ。左右第一大臼歯遠心接触面から中切歯唇側歯肉最深部の距離。大坪式模型計測器などで計測する。Basal arch length.

関連項目:歯列弓長径歯槽基底弓幅径

歯槽基底弓幅径

矯正歯科での診断に用いる模型分析の計測項目の一つ。左右第一小臼歯の根尖に相当する歯肉最深部間の距離。模型上で矯正歯科用ノギス等で計測する。Basal arch width.

関連項目:歯列弓幅径歯槽基底弓長径

上顎前突

じょうがくぜんとつ。頭蓋に対して上顎骨が前方位をとっているもの。または単純にオーバージェットが大きいことを指して言う。出っ歯や口元の突出の原因となることが多い。

関連項目:下顎前突

上顎前方牽引装置

じょうがくぜんぽうけんいんそうち。フェイシャルマスク。うけ口(反対咬合)の治療に用いられる。上顎の成長期に適用される。上顎骨の成長を促し、骨格性の反対咬合を治療する。フェイシャルマスクは取り外しのできる矯正装置で、就寝時を含めて、在宅時に使用する(1日10〜14時間)。

歯列弓長径

矯正歯科での診断に用いる模型分析の計測項目の一つ。歯並びの長さをあらわす分析値。大坪式模型計測器などで計測する。左右第一大臼歯遠心接触点を結ぶ線から中切歯切縁までの距離。Coronal arch length.

関連項目:歯列弓幅径歯槽基底弓長径

歯列弓幅径

矯正歯科での診断に用いる模型分析の計測項目の一つ。歯並びの幅をあらわす分析値。模型上でノギスで計測する。左右の第一小臼歯頬側咬頭頂間の距離。Coronal arch width.

関連項目:歯列弓長径歯槽基底弓幅径

唇側転位

ある前歯が、他の歯と比べて外側に飛び出してしまっていること。奥歯の場合は頬側転位(きょうそくてんい)と言う。

シンチバック

歯列矯正用ワイヤーの端が唇や頬に刺さったり、抜けてしまったりすることを避けるために、ワイヤーの端を曲げ込むこと。形状記憶合金の歯列矯正用ワイヤーの場合は、シンチバックプライヤーを用いるか、ワイヤーの端をあえて焼き鈍して形状記憶能力を喪失させて行う。

シンチバックプライヤー

シンチバックを行うための矯正歯科用ブライヤー。左右が別々になっており2本必要なタイプと、1本で兼用するタイプがある。シンチバックプライヤーを用いるとチェアタイムを短縮することができるが、一点に力を集中させて屈曲しているため、元に戻す場合はワイヤーが破折することが多い。

睡眠時無呼吸症候群

sleep apnea syndrome; SAS. 睡眠時に呼吸停止または低呼吸になる病気。肥満との関連が強いことは良く知られているが、下顎後退症との関連が近年取りざたされている。

ストリッピング

歯のサイズを僅かに小さくするために歯を削ること。歯列矯正を行う上で、歯を排列するスペースが少量足りない時、上下の歯の大きさのバランスが悪い時、左右の歯の大きさのバランスが悪い時などに行われる。ディスキングとも言われる。

スピード矯正

学術的な用語ではなく、日本の一般開業医による造語のため、明確な定義は無い。コルチコトミー(歯槽骨に刻み目を入れる手術)により歯の移動速度を速めるものを指す場合や、歯を削って被せものをして見た目上の歯並びを整える方法を指す場合が有る(歯根の位置は変わらない)。歯並びが悪いまま歯を削って無理に被せものをすると、歯の神経が死んでしまったり、被せものが割れるたびにを取り替えて、非常に高い維持費が必要となるため、安易に選択しないよう注意が必要である。

正中離開

上顎中切歯(上の真ん中の前歯)の間があいていること。萌出したばかりの上顎中切歯は正中離開を起こしているのが普通であり、隣の歯(側切歯)が萌出する際に閉鎖することが多い。

関連項目:醜いアヒルの子の時期

舌側矯正

矯正歯科学では舌側矯正(ぜっそくきょうせい)が正しい。歯を動かすためのワイヤーを通すブラケットを、歯の裏側(舌側)に装着する矯正治療法のこと。見えない矯正装置であるため、他人に気づかれずに歯並びを良くしたい人、矯正装置の見た目に強い抵抗がある人に勧められる。舌房(舌の置き場)が狭くなる、発音に影響が出る場合が有る、などのデメリットがある。

舌側転位

ある歯が、他の歯と比べて、内側に飛び出してしまっていること。舌があるのは下顎なので、下顎の歯のことを言う場合が多いが、上顎の歯を指すこともある。上顎の歯の場合は口蓋側転位(こうがいそくてんい)と言うことが多い。下顎の歯を指して、口蓋側転位と言うことは無い。

セファログラム

頭部X線規格写真のこと。矯正治療の検査で必ず撮影する横顔のレントゲン写真。骨格や歯の傾きを詳しく分析することができる、世界共通の規格写真であるため、異なる施設で撮った2時点のセファログラムを重ね合わせ、比較検討することができる。大学病院や矯正を専門とする歯科医院では矯正治療開始前に必ず撮影し分析が行われる。

セラ

セファログラムの計測点。トルコ鞍中心点。S 点はトルコ鞍の壷状陰影像の中心点と定義される。視診によって求める。

セラミックブラケット

セラミックでできた歯列矯正用、審美ブラケット。同じく審美ブラケットであるプラスチックブラケットと比較し、変色に強い。反面、比較的サイズが大きい、非常に硬いため、対合歯の摩耗のリスクが有る、などのデメリットも有る。

セルフライゲーションブラケット

開閉する蓋を装備しており、蓋を閉めることによってワイヤーを把持し、結紮を不要にしているブラケットのこと。ワイヤーが滑る際の摩擦が少ないため、矯正治療での歯の移動に伴う痛みが少ないとされている。矯正治療期間が短縮できるという説も有るが、最近では治療期間に有意差は無いという報告も多い。チェアタイムが削減できるのは疑いようのない事実である。

叢生

歯並びの不正、ガタガタ。crowding。歯と顎の大きさのアンバランス(アーチレングスディスクレパンシー: 歯に対して顎が小さい、顎に対して歯が大きい)から生じる。また、筋機能の異常(異常な頬圧など)や、歯周病などから叢生を生じる場合も有る。

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について

1.最初は矯正装置による不快感、痛み等があるものの、数日から1、2週間で慣れることが多いです。
2.歯の動き方には個人差があるため、想定した治療期間が延長する可能性があります。
3.装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療は患者さんの努力が必要となります。それらが治療結果や治療期間に影響します。
4.治療中は、装置が付くため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まるため、丁寧なブラッシングや、定期的なメンテナンスが重要になります。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
5.歯を動かすことで歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
6.ごくまれに歯が骨と癒着し、歯が動かないことがあります。
7.ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受け、壊死することがあります。
8.治療中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
9.治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
10.様々な問題による影響で、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
11.歯の形を修正や、咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
12.矯正装置を誤飲する可能性があります。
13.装置を外す際、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
14.装置を外した後、保定装置を指示通り使用しないため、後戻りの生じる可能性が高くなります。
15.装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
16.あごの成長発育により咬み合わせや歯並びが変化する可能性があります。
17.治療後に親知らずが生え、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせると咬み合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
18.矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。