か行

開咬

かいこう。奥歯で咬んだ時に、前方の歯が当たらない不正咬合を言う。噛み合わせの負担が奥歯に集中するため、歯を失いやすい。開咬は悪習癖との因果関係が強く、舌突出癖(異常嚥下癖)や、吸指癖(指しゃぶり)などがあると開咬になりやすい。

子供の開咬の矯正治療は悪習癖の除去が主となる。タングクリブなどの矯正装置を用い、筋機能療法を行う。大人の開咬の矯正治療はマルチブラケットによる歯列矯正となる。悪習癖が残っていると、いくら矯正治療を行っても開咬が再発するため、大人の場合でも筋機能療法は不可欠である。骨格的な開咬が著しい場合は、外科的矯正治療の対象となる。

過蓋咬合

かがいこうごう。不正咬合の一つ。噛み合わせが深いこと。オーバーバイトが大きいこと。噛み合わせた時に下の歯がほとんど見えないため、審美的でない。また、顎関節に負担のかかりやすい噛み合わせであると言われている。

下顎下縁平面角

フランクフルト平面と下顎下縁平面のなす角度。FMA、Mandibular plane angleとも言う。その角度と噛み合わせの力は反比例する傾向にある。

下顎前突

かがくぜんとつ。頭蓋に対して下顎骨が前方位をとっているもの。うけ口。前歯部が反対咬合とは限らない。

関連項目:上顎前突

顎変形症

骨格的な不調和が、顎の手術(外科的矯正治療)を必要とするほど大きなもの。歯列矯正による歯の移動と、顎の手術を併用して治療する。指定を受けた医療機関では、歯列矯正、顎の手術ともに健康保険の適用が可能である。

重ね合わせ

異なる2時点以上のセファログラムを用いて、成長の度合いや治療の効果を比較検討すること。Superimposition.セファログラムは規格写真であるため、文字通りレントゲンを重ねて見ることによって比較することができる。

顎間ゴム

がっかんごむ。固定源の確保や、咬合の緊密化を目的として、上顎と下顎のそれぞれのフックにかけるゴム。患者自身が取り外しをし、基本的には終日使用する。顎間ゴムの使用頻度が治療の結果を大きく左右することも多い。

ガミースマイル

笑った時に上顎の歯肉が過度に露出すること。出っ歯や、上顎骨の垂直的な過成長、短い上唇などが原因。矯正治療により改善が可能であるが、重度のガミースマイルの改善には手術を必要とすることもある。

カラーゴム

矯正治療をオシャレに楽しみたいという人のための、色のついた結紮用のゴム(モジュール)。様々な色があるが、ピンクなどのパステルカラーが人気。

吸指癖

きゅうしへき。指しゃぶりのこと。2歳までは正常だが、それ以降は歯並びに悪影響を与えるため、やめさせた方が良い。上下の前歯の間に指が入り込むため、上下の前歯が当たらない開咬や出っ歯の原因となる。また、吸い込む力が上顎歯列の狭窄の原因となる(上顎の歯並びが狭くなる)。

関連項目:狭窄歯列弓

急速拡大装置

急速拡大装置上顎骨の幅を短期間で拡大する装置のこと。Rapid Maxillary Expansion。上顎の正中口蓋縫合を離開させて拡大を行うため、骨化の完了する中高生までの使用が望ましい。

上顎の歯槽骨の幅が、下顎のそれに対して狭い場合に有効な装置である。装置の使用中に上顎前歯に正中離開が生じるが、拡大が奏功している証拠であり、後で閉鎖すれば問題無い。

狭窄歯列弓

幅の狭い歯並びのこと。異常な頬圧や、指しゃぶり(吸指癖)などが原因でなることが多い。上顎の前歯が押し出されて出っ歯の歯並びになることが多い。歯列矯正治療により改善することができる。

矯正用インプラント

歯を動かすための絶対的な固定源として矯正治療の間だけ骨に埋めるインプラントのこと。直径1.4〜2.0mmほどの小さなスクリュータイプとプレートタイプが有る。矯正用インプラントにより、従来であれば外科的矯正治療を必要としたような症例の一部が、手術をせずに治療できるようになった。2012年日本矯正歯科学会によりガイドラインが作成され、歯科矯正用アンカースクリューという名称となった。

頬側転位

ある奥歯が、他の歯と比べて、外側に飛び出してしまっていること。前歯の場合は唇側転位(しんそくてんい)と言う。

筋機能療法

MFT ; Myo Functional Therapy. 矯正装置を特に用いることなく、口のまわりの筋肉の正しい使い方をトレーニングすることにより、不正咬合を改善する治療法。矯正装置と併用して行われる場合も多い。

金属アレルギー用矯正装置

特定の金属に対してアレルギーのある患者さんに用いられる、金属を含まない、あるいは生体親和性の高い金属を用いたワイヤーやブラケットなどの矯正装置のこと。

グナチオン

セファログラムの計測点の一つ。顔面平面 (Na-Pog)と下顎下縁平面となす角の二等分線がオトガイ隆起前縁と交わる点。

クロスエラスティック

部分的な交叉咬合や鋏状咬合の解消のために用いられる顎間ゴムの掛け方。相反固定を利用している。

クワドヘリックス

クワドヘリックス歯列矯正装置の名称。上顎の歯並びの拡大に用いられる、4つのループを含んだワイヤーの固定式拡大装置。歯並びの幅を広げてスペースを獲得できるため、歯を抜かない矯正治療を行う場合に用いられることが多い。

結紮線

歯列矯正用ブラケットにメインワイヤーを結びつけるための細いワイヤーのこと。いくつかの太さの種類があるが、いずれも直径.010インチ前後である。一般的には銀色であるが、審美性を重視した白い結紮線も存在する。

口蓋側転位

上顎のある歯が、他の歯と比べて内側に飛び出してしまっていること。下顎の歯の場合は舌側転位(ぜっそくてんい)と言う。

口唇閉鎖不全

口元が出ており、口がうまく閉じられないこと。いつも口が開いている、口を閉じた時に顎に皺(しわ)ができるなど。口腔内が乾燥しやすく、虫歯や歯周病の原因菌の繁殖、口臭、ドライマウスなどの原因となる。矯正治療により改善が可能。

咬唇癖

こうしんへき 。唇を噛む悪習癖。ほとんどの場合は下唇を噛む癖で、その力により、上顎前歯は唇側に傾斜し、下顎前歯は舌側へ傾斜するため、上顎前突(出っ歯)になる。リップバンパーにより防ぐことができる。

関連項目:吸指癖咬爪癖

咬爪癖

こうそうへき。爪を噛む癖。開咬の原因となる場合があるため、やめさせた方が良い。

関連項目:吸指癖咬唇癖

ゴニオン

歯科矯正学の診断で用いるセファログラムの計測点の一つ。下顎枝後縁(Ar-Ramus down)と下顎下縁平面が交わる角の二等分線が下顎骨縁と交わる点。

小林フック

先端に顎間ゴムをかけるためのフックがついている結紮線のこと。強度が求められるため、通常の結紮線より太い径のもの(.010〜.014inch)を用いることが多い。

コルチコトミー

歯列矯正治療の開始前に歯槽骨に刻み目を入れて、代謝を良くして歯の動くスピードを上げる手術のこと。

コンバーチブルチューブ

第一大臼歯に装着する歯列矯正用バッカルチューブの一つで、取り外しのできるのキャップを備えたもの。キャップを取り外すと、ツインブラケットとして使用できる。

矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について

1.最初は矯正装置による不快感、痛み等があるものの、数日から1、2週間で慣れることが多いです。
2.歯の動き方には個人差があるため、想定した治療期間が延長する可能性があります。
3.装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院等、矯正治療は患者さんの努力が必要となります。それらが治療結果や治療期間に影響します。
4.治療中は、装置が付くため歯が磨きにくくなります。むし歯や歯周病のリスクが高まるため、丁寧なブラッシングや、定期的なメンテナンスが重要になります。また、歯が動くと隠れていたむし歯が見えるようになることもあります。
5.歯を動かすことで歯根が吸収して短くなることがあります。また、歯ぐきがやせて下がることがあります。
6.ごくまれに歯が骨と癒着し、歯が動かないことがあります。
7.ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受け、壊死することがあります。
8.治療中に金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
9.治療中に「顎関節で音が鳴る、あごが痛い、口が開けにくい」などの顎関節症状が出ることがあります。
10.様々な問題による影響で、当初予定した治療計画を変更する可能性があります。
11.歯の形を修正や、咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
12.矯正装置を誤飲する可能性があります。
13.装置を外す際、エナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
14.装置を外した後、保定装置を指示通り使用しないため、後戻りの生じる可能性が高くなります。
15.装置が外れた後、現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす可能性があります。
16.あごの成長発育により咬み合わせや歯並びが変化する可能性があります。
17.治療後に親知らずが生え、凸凹が生じる可能性があります。加齢や歯周病等により歯を支えている骨がやせると咬み合わせや歯並びが変化することがあります。その場合、再治療等が必要になることがあります。
18.矯正歯科治療は、一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。